虫歯にしないために

  • 2015年10月2日 12:49 PM

虫歯(齲歯、齲蝕歯)にしないために

虫歯については歯科が専門ですが、赤ちゃんのころからの注意で虫歯を防ぐことは可能ですので育児の参考にしていただきたくとり上げました。

妊娠中の食事に注意しましょう

まだ歯が生えていない生まれたばかりの赤ちゃんでもX線写真をとると歯のもとがはっきり写ります。胎児の間に丈夫な歯のもとができるということです。ですから妊娠中、バランスのよい食事に心がけることが大切です。現在日本人で不足気味なのはカルシウムですので妊娠中はとくにとるようにこころがけましょう。

虫歯はどのようにしてできるでしょうか。

虫歯がどうしてできるか説明しましょう。虫歯の原因として大きな役割をはたすのはミュータンス連鎖球菌群に属する数種類の細菌で、中でもミュータンス菌が最も大きな役割をはたしています。このミュータンス菌は歯の表面で砂糖(蔗糖)を分解してグルカンを作ります。グルカンはねばねばのため歯にしっかりくっつきます。このグルカンを培地として口の中にいるさまざまな細菌が繁殖し有機酸を産生し歯の表面を酸性にします。この酸が歯のエナメル質を溶かし虫歯を引き起こします。唾液がよく出ているときは酸性になりにくいのですが、寝ているときは唾液が出ないため酸性になり虫歯ができやすくなります。

ミュータンス菌の感染を防止できるでしょうか

ほとんどが保菌者であるお母さんから唾液を介して入り子どもの歯に感染すると考えられています。他に子どもから子どもへの感染、日本では父親からの感染も見られるとのことです。感染する時期は、統計的には生後19~31カ月で、いったん感染すると通常は歯がなくなるまで持続します。この時期に感染しやすい原因としては母乳に含まれるミュータンス菌に対する抗体の作用が期待できなくなること、自分自身の抗体産生能も低いために入ってきたミュータンス菌の感染を許してしまうこと、感染の大きな原因の砂糖を多くとる年齢でもあることが考えられます。唾液を介して入ってくることを防止することは日常極めて難しいことですが、噛みくだいた物を赤ちゃんに与えないようにする、唾液が触れるようなチューをしないようにするなどは直接菌が入ってくることを避けることに少しは効果があると考えられています。口の中にミュータンス菌が入っても砂糖がなければ菌が感染しにくいので砂糖を与えないようにすることが最も大切なことと言えます。ミュータンス菌が歯の噛み合わせの溝に感染すると歯磨きや薬剤による除菌が難しくなるので溝の多い第一大臼歯(奥歯)が生えるまでは特に感染しないよう に注意することが大切です。31か月を過ぎれば感染しなくなるわけではありませんし、ある年齢に達すれば絶対に感染しなくなるとは言いきれませんが、年齢とともに感染しにくくなると考えられています。これは、乳幼児期に比べてミュータンス菌に対する唾液の抗体価が上がるためと言われています。夫婦間の相互感染はほとんど見られません。ミュータンス菌が感染してしまっても(大部分の人がそうですが)、砂糖を控え、食後と寝る前に正しい歯磨き(ブラッシング)をすること、日頃から口腔内を清浄にすることを心がければ虫歯を防ぐことも可能なことは言うまでもありません。ここではこれについては詳しく触れません。

おわりに
最近の唾液中の細菌の検査では母子ともにミュータンス菌が出ない例もまれではないとのことで大変喜ばしいことです。小児科医から見て「子どもの歯は育児の通知表」です。きれいな歯がこぼれる笑顔の子はしつけも行き届き、子どもらしい元気な子が多いと感じています。永久歯は抜けたら生え変わることはありません。乳歯が生える前から歯のことを考えた育児と生活習慣に心がけてください。

(日本医事新報No.4211号を参考にしました)

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